新規就農者

[未来人材プラス]世界に並ぶワインを 中学校教諭から転身 「ピノノワール」を栽培 北海道余市町・杉山彩さん(38)

 北海道余市町のワイナリー「YUI(ゆい)」で社長を務める杉山彩さん(38)は、東京都内の中学校教諭から農家に転身した。自ら育てたブドウで醸造するワイナリーを経営し、国内では結実が難しいとされるフランス系の「ピノノワール」の栽培に挑戦する。

 宇都宮市出身。北海道大学理学部物理学科を経てさらに大学院で超電導を研究し、2007年から理科教諭として教壇に立った。

 ワイナリーの共同経営者でもある埼玉県出身で建築士の哲哉さん(41)と結婚した。都会での暮らしは多忙を極めた。彩さんは「私も、夫も仕事に打ち込み過ぎて……。まるでマシンのようだった」と振り返る。長女と次女の子育ての時間もなかなか取れず、漠然と「北海道でやり直してみたい」と考えるようになった。

 そこで着目したのがワイナリー経営。国内では結実が難しいとされるフランス系の「ピノノワール」が北海道余市町で栽培されていることを知り、移住を決断した。

 JAよいちなどで構成する町新規就農者支援センターの計らいで17年3月に移住した。4月から町内のワイナリーで研修生となって基礎を学ぶ一方、18年1月にセンターの支援を受けるなどし、果樹畑6・2ヘクタールを購入。20年9月にワインの醸造免許を取得して念願の独立を果たした。

 リンゴなどは切り倒し、「ピノノワール」をはじめとするワイン用ブドウを苗木から育てている。生食用は栽培を続け、ワイン原料として活用する。豊作だった1年目の20年産は想定外の1万8000本(1本750ミリリットル)を製造できた。哲哉さんは「売り切るのが大変だった。1万本が適量」とみる。

 寒暖差と、海風などに恵まれた余市町は、ワイン用ブドウ栽培の適地とされている。「安全で品質の高いピノノワールを育て、世界に通用するワインをつくりたい」。彩さんの夢だ。

 

余市町の就農者向けウェブサイトはこちら

https://www.town.yoichi.hokkaido.jp/sangyou/jouhou/nougyou/hajimetemimasenka.html