新規就農者
巨峰産地で安定栽培 スマート農業にも挑戦
「成功は目指さない。失敗しない経営を実践する」。山梨県山梨市でブドウを80アール栽培する大村信弘さん(35)は、2021年に就農した。安定収入を掲げて販路を多角化し、施設増設にクラウドファンディングを計画、スマート農業にも挑戦する。
前職は会社員だった。「働き方に不安を感じ、自分のペースで働きたい」と離職。中学生まで手伝っていた親戚のブドウ農家が頭に浮かび、「農業に骨を埋める覚悟」で、転職の1年前から入念な準備を始めた。
県就農支援センターに相談し、県立農林大学校の職業訓練に通った。地元の同市牧丘町は、国内有数の「巨峰」産地だ。棚付き園地を確保し、農機具は離農者から譲り受け、初期投資費用を抑えた。JAバンク山梨の「ニューファーマー育成スクール」を受講し、経営感覚を身に付けた。
現在は8カ所(80アール)で、「巨峰」を中心に「シャインマスカット」や「マイハート」などを栽培する。収益性を考え、「シャインマスカット」への転換を進め、5アールの栽培面積を来年に12アール、将来は80アールに広げる。収量は昨年から2・5トン増え、10トン。半数はJAフルーツ山梨に出荷し、海外輸出業者やインターネットでも販売する。来春にホームページを開設し、「贈答需要を狙い、特選箱で届ける食べ比べセットを用意したい」と優位性を出す。
栽培面では農薬の種類や散布時期をアプリで管理し、独自の防除暦を作成した。雨よけハウスの建設に向け、来年秋にクラウドファンディングを計画。病害虫や農薬の使用頻度などの情報を発信し、クラウドファンディング利用者に理解や協力を求める。天候の影響を受けにくい、根域制限栽培に挑戦する。
地域の担い手不足に備え、スマート農業にも取り組む。地上型ドローンによる農薬散布や自動かん水システムの導入を視野に「効率化を図り、地域の農地を守る役割を果たしたい」と話す。
▼大村さんが学んだ山梨県立農林大学校の紹介ページはこちら。
https://www.pref.yamanashi.jp/noudai/
▼大村さんが受講した「ニューファーマー育成スクール」などJAバンク山梨が開く研修会の開催案内ページはこちら。