新規就農者
居抜き継承で酪農経営 妻と二人三脚で奮闘
北海道せたな町の酪農家、河合聖さん(33)は「牛乳が大好き」との思いから酪農家になる夢をかなえた。居抜き継承で、妻の佑奈さん(32)と共に酪農経営をスタートして1年。厳しい環境でも前向きに経営を進めている。
河合さんは愛知県豊橋市出身。子どもの頃から牛乳が大好きで、酪農に憧れを抱いてきた。自転車競技に明け暮れた大学卒業後、北海道の酪農地帯である十勝や釧路の牧場で実習を重ねてきた。その後、地元の自動車部品工場で働いて資金をため、25歳でニュージーランドに渡り1年間放牧酪農を学んだ。
帰国後、地元の郵便局勤務を経て「北海道で酪農家になる」夢を胸に北海道に戻り、士別市の牧場に勤務。ここで同じ豊橋市生まれの佑奈さんと出会い、同郷で同じ夢を持つ2人は意気投合。2019年末に結婚した。
2人が、せたな町を選んだきっかけは、同町が舞台の映画「そらのレストラン」だ。
20年、同町に移住し酪農ヘルパーとして働きながら就農を目指す中、健康上の理由で牧場を閉じようとする酪農家を知った。町役場、地元のJA新はこだてが双方を取り持ちバックアップ。担い手受け入れ組織の支援もあり、昨年4月、乳牛30頭、採草地24ヘクタールの酪農経営を引き継いだ。
牧場は海が見える絶好のロケーション。経営開始時には、近隣農家、役場、JA新はこだて関係者が牧場に集まり2人の門出を祝福、激励した。
この1年で飼料の高騰など酪農情勢は急激に悪化。餌代がかさみ経営は想像以上に厳しい。しかし、現実と向き合いながらも、乳牛頭数を40頭に増やし、目標の放牧酪農実現へ、着実に歩みを進めている。放牧地の整備と拡大が当面の課題だ。
河合さんは「夢が実現できてうれしい。せたな町は気候も良く人々も温かい。支えてくれた多くの人の心は忘れない」と前を向く。(おわり)
▼河合さんが活用した「産業担い手育成事業奨励金」など、町の就農支援について解説している「せたな町農業担い手育成センター」のウェブサイトはこちら