新規就農者

農地を守る 休耕地借り規模拡大 神奈川県相模原市・笹野光広さん(59)

年40品目 有機めざす

 神奈川県相模原市の笹野光広さん(59)は、2021年に新規就農した。1・5ヘクタールでサツマイモやダイコンなど季節の野菜を年間40品目栽培する。近隣の保育園に収穫体験を提案し、休耕地を借りて規模を拡大するなど地域農業を守ろうと奮闘する。

 両親は同市で最後の養蚕農家で、高齢で養蚕をやめた後も自家用に野菜を作っていた。後を継いでほしいと言われなかったが、「耕作放棄地が目につくようになり、生まれ育った景色が変わっていくのを見るのが忍びなかった」と早期退職し、就農を決意した。

 社会人向けの農業スクールで学び、愛川町で有機農業を営む農業者の下で経験を積んだ。栽培期間中は農薬、化学肥料を使わずに栽培し、緑肥を使った土づくりに力を入れる。23年度の有機JAS認証の取得を目指す。JA相模原市の農産物直売所の他、地元や東京都内のスーパーなどに出荷する。有機野菜は都内のニーズが高く、高値で販売できるという。

 地域の農業振興にも力を入れる。農業に親しんでもらおうと、JAの新規就農者連絡会を通じて学校給食へ出荷する。近隣の保育園には自ら収穫体験の実施を提案し、今秋の実現を見込む。また、地元の人に声をかけて積極的に休耕地を借り受ける。23年度は1・7ヘクタールに増える予定だ。

 農作業を始めてから85キロあった体重が68キロまで減った。作業をしても膝や肘が痛まなくなり、「農業をやる体になってきた」と笹野さん。「両親や先輩農家のおかげで次につなぐ農地がある。この環境を守っていきたい」と意気込む。