新規就農者
「明暗」は自分次第
北海道豊富町豊栄地区の酪農家・大塚利美さん(27)は、厳しい酪農環境の最中、妻の佳苗さん(26)と新規就農した。「良い時を知らない。今のやり方でやるだけ」と迷いがない。尊敬する地域の酪農家と父親の姿を思い、覚悟を持って営農する。
大塚さんは昨年10月から牛を導入し、12月から搾乳を始めた。育成牛を含め56頭飼育する。現在はつなぎ牛舎だが、自身の飼養技術が向上すれば、いつかは放牧する夢がある。牛舎は全ての窓を開け放ち、いくつも設置する扇風機で風通しを良くする。「家より牛舎の方が快適」と、大塚さんは笑顔で話す。
就農してから約半年がたち、大塚さんは「自分次第でいくらでも変わる」と、酪農経営にやりがいを感じている。理想とする牛飼いが同町にいて、目標にしている。牛も牛舎も常に清潔にし、分からないことは先輩たちに何でも聞く。
大塚さんはJA北宗谷や関連機関との綿密な連携を欠かさず、飼養管理や経営と向き合っている。「今の情勢しか知らないので、良い時と比較のしようがない」と覚悟を持ち、日々を積み重ねている。
北海道佐呂間町出身の大塚さん。4人兄弟の3番目だ。兄弟が肉牛牧場の従業員、大工、公務員の職に就く中で、唯一、父と同じ酪農家になった。中学生まで好きなバスケットボールに打ち込み、酪農を手伝ったことはなかった。高校で手伝わないかと言われ、渋々手伝った。
しかし、だんだんと酪農の面白さを知った。父の働く姿を見るうちに、のめり込んだ。「シンプルにかっこいいと思った」と、大塚さんは父を尊敬した。
その後、牧場従業員やヘルパーを務め、先輩酪農家と会話を重ねるうちに、独立就農への思いが高まった。インターネットで新規就農について調べると、最初に「豊富町」が出た。妻を説得し役場に連絡。条件や事業、サポートの内容を確認して、すぐに同町での就農を決めた。外から来る人間は「サポートがないと孤独になる。手厚さが決め手だった」と大塚さんは話す。
地域には8戸の酪農家がいる。20代から40代の若手世代で集まりも多い。「これからも先輩農家に学び、連携して地域の酪農を盛り上げていきたい」。苦境に愚痴を言わず、酪農経営に前を向く。
豊富町など管内の新規就農者支援について解説したJA北宗谷のウェブサイトはこちら