新規就農者
フランス料理のシェフからマンゴー農家に転身したのは、茨城県日立市の鈴木拓海さん(41)。パリでシェフの修業をして帰国。独立後、自ら作った食材を使いたいとの思いが募り、果樹栽培に手を付けた。沖縄で印象に残ったマンゴーを作ろうと、2013年に10本の鉢植えを始めた。現在はハウスで、150本の木から年間約3000個を収穫する。
幼少期から料理やシュークリームなどの菓子を作るのが得意だった鈴木さん。シェフになるのが夢で、調理師専門学校を19歳で卒業して渡仏。パリのビストロや三つ星の飲食店などで修業した。
フランスに5年間滞在して04年に帰国。「両親が営む飲食店で経営を学んだ。独立するなら、食材も自分で作りたかった」と就農を決めた。
だが、農業は未経験だった。JA日立市多賀の紹介で農地を借り、16年に就農した。マンゴーの他、30アールでナスやエダマメなども1人で栽培する。マンゴーは、養分が分散しないように、根域を制御したボックスで栽培。樹上完熟で収穫するため、糖度は15以上だ。
販路は自ら開拓した。通販サイトなどで、1玉3000円前後で売る。異業種の若手経営者が集まる場に顔を出し、知り合った企業が開くイベントなどで大口の注文も獲得した。とろけるような食感が口コミで広がり毎年完売する。規格外品は両親の飲食店を活用して、ジャムやタルトに加工する。加工品を含めたマンゴーの利益は、年間約300万円という。
マンゴーを栽培する7アール2連棟のハウスや農機は自己資金で調達した。19年に行政支援が手厚い認定農業者になったと同時に、理事としてJA運営にも携わる。くくりわなや箱わな、銃免許も取得して地域の有害鳥獣駆除にも貢献する。鈴木さんの今の夢はシェフ兼農家。「新型コロナウイルス禍でも需要が見込めるケータリングを展開したい」と展望する。