新規就農者
大阪府茨木市出身の村上大喜さん(23)は、滋賀県愛荘町に単身で移住し、後継者不在の野菜農家の下で新規就農した。現在は“師匠”から借りた農地を使い、農業経営を自力でゼロから軌道に乗せようと奮闘真っただ中だ。「経験しないと身に付かない」という“師匠”の方針に従い、経営のいろはを実践で学ぶ日々を送る。“免許皆伝”が認められれば、第三者継承で経営を引き継ぐ計画だ。
実家は農家でなく、日常で農業に触れる機会はほとんどなかった。
転機は高校生の時。テレビ番組で、6次産業化やカフェ経営に取り組む農家が取り上げられていた。「元々、何かに挑戦したいという思いがあった。アイデア次第で、さまざまな事業を展開できる点に、農業の魅力を感じた」と振り返る。
卒業後、専門性の高い授業内容が決め手となり、滋賀県立農業大学校に進学。在学中、後に“師匠”となる岡部明さん(64)の下で研修。後継者を探していた岡部さんの誘いを受け、20歳で岡部さんの下で就農した。
就農後は岡部さんから借り受けた農地を使って、農作物の生産から販売までの経営全般に、自力で取り組む。岡部さんからの指導はあるものの、経営には基本的にノータッチだ。岡部さんは「しっかりした経営者に育つよう、経営の全てを一から経験してもらっている」と話す。
現在、野菜を中心に年間80品種をハウス5棟と露地で栽培。飛び込み営業などで切り開いた県内外の飲食店20店舗ほどに販売する。JA東びわこの直売所にも出荷する。岡部さん直伝の栽培方法で引き出した、甘味とうま味の強さが評判だ。
今後、岡部さんから経営を引き継ぎ、法人化する計画だ。会社名は「継ノ(つぎの)農園」。「先代の農業を引き『継ぎ』、さらに『次』の世代へとつないでいきたい」。将来を見据えて歩みを進める。