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[未来人材プラス]カヤの里山と味守り、地元に仕事つくる 若者が希望持つ礎に 新潟県佐渡市 野口菜々さん(26)

 地元は好きだが仕事がないから帰れない……。そんな現状を変えようと新潟県佐渡市の野口菜々さん(26)は、特産・カヤの実に注目。存続の危機に直面していたカヤの実を材料に菓子を製造・販売する組織を引き継ぎ、2代目の代表に就任した。成木になるまで300年必要とされるカヤの森と山を、実の採取から加工までを通して守りながら事業を進める。

 東京の大学で国際社会学を学び、海外支援の仕事に就こうとしていた。「日本は経済的に恵まれているが、心は本当に豊かなのか」。目を向けるべきは、身近にあるのかも。そんな時、子どもの頃から親しむ地域特産のカヤの実を、加工・販売する「かやの実会」が存続の危機と知った。

 「生まれ故郷はお金では買えないから守りたい。でも、戻っても仕事がないと」。代表が高齢で後継者もいなかった同会を受け継ごうと決めた。家族を含め反対は強かったが、何をしたいか考え尽くし、一番ハードルが高い道を選んだ。

 佐渡島のカヤはイチイ科で、成木は高さ20メートルを超える。所有者が島外にいる林の周辺の草刈りなど保全活動に積極的だ。

 木材は木目が詰まり評価が高いが、活用まで長い年月が必要。島の育成組合が30年前に育て始めた実生苗は、10月に初めて配布したが、ポットで扱うほど小さい。可食部は8月末~10月に収穫した実をいり、割った中身だ。独特の香ばしさが特徴で、食感は硬めのアーモンドのようだ。

 同会は実を粉にして、かりんとうで販売する。野口さんはパッケージを一新、カヤの実を食べて神通力を得たとされる、てんぐをかわいらしく配置した。販路は島内から新潟市の百貨店や東京にも広がる。「若者が地域に希望を持つ、一例になれば」と語る。