新規就農者
福岡県八女市の天ケ瀬章さん(39)は出身地の神戸市から移住し、フランス料理人からイチゴ「あまおう」を作る農家に転身した。独立直後に豪雨に見舞われたものの、苗を守り抜いて初出荷にこぎ着けた。JAの農業研修で学んだ内容を着実に実践し、料理人時代に出合った理想の「あまおう」作りを目指す。
天ケ瀬さんは高校卒業後、フランス料理人として神戸市のホテルなどで勤務した。早朝から深夜まで続く仕事に、「生涯続けられる農業をしたい」との思いを募らせていった。2016年、フランス料理店の立ち上げに協力するため福岡市に移住した。
県内の就農支援相談会を回る中、JAふくおか八女の就農支援センターが、天ケ瀬さんが必要としていた経営収支などを細かく説明してくれたことが決め手になった。20年に同センターで研修。21年6月に16・5アールの遊休ハウスを継承して独立した。
縁もゆかりもない土地での就農で天ケ瀬さんは近所で出会う人へのあいさつを心掛けた。「最初は反応が薄いこともあったが徐々に顔を覚えてもらい打ち解けてきた」と話す。現在、妻と2人で作業しているが、繁忙期には近所の人も手伝ってくれるようになった。
だが独立直後の8月、記録的な豪雨が襲った。天ケ瀬さんの育苗施設も浸水。必死で排水し、苗を高設棚に移動させて被害を防いだが「自然相手の農業の難しさを改めて痛感した」と振り返る。
料理人時代、さまざまなイチゴを調理したが、特に粒が大きく、甘味の強い「あまおう」に魅了された。「ブランドに恥じない『あまおう』を作りたい」。基礎に忠実な栽培を実践し、21年11月中旬に初出荷を迎えた。
栽培管理、収穫、パック詰めと、想像以上に多忙な日々を送るが「充実している」と天ケ瀬さん。「今後は料理人の経験を生かしアイスクリーム加工事業なども始めたい」と夢を膨らませる。
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