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[未来人材プラス]「半農半X」暮らし 地域に欠かせぬ戦力 獣害減へ鹿捕獲、加工 埼玉県飯能市・遠藤拓耶さん(36)

 埼玉県飯能市の遠藤拓耶さん(36)は、神奈川県から2017年に移住し「半農半X」を実践する。平日は東京都内で勤務する傍ら、週末は野菜栽培や獣害に悩む農家の依頼を受けて鹿の駆除にも励む。妻の望さん(34)と駆除した鹿肉を犬用のジャーキーへの加工・販売も手掛ける。

 拓耶さんは、ログハウスに住むのが夢で自然豊かな場所への移住を考えていた。移住先を4、5年探す中、住宅情報誌で飯能市の独自制度に目が留まった。市街化調整区域の遊休農地に住宅を建てられる国の「優良田園住宅制度」を基に農業体験、家庭菜園、農園利用、農地利用のプログラムで講習会や栽培指導などの支援が受けられる。市は16年度から農業活性化を目的に、制度を利用した移住者に最大400万円を交付している。

 「都心まで電車で約1時間、広い土地に家を建てられて家庭菜園もできる。ここしかない」と、望さんを説得。長男の就学を控え、制度を知った翌月には市内の仮住まいに引っ越した。

 拓耶さんは近隣農家から指導を受け、「のらぼう菜」を栽培し、消防団や祭りにも携わるなど立派な地域の戦力だ。「世代の離れた人との付き合いが多いが、移住者が心を開けば田舎暮らしは何倍も楽しくなる」と語る。

 移住2年後、知人の誘いで鹿を解体した。地域では、農作物の獣害に悩まされる一方、駆除後はごみとして捨てられることに胸が痛んだ。「命を他の命につなぐ手伝いをしたかった」と話す。

 わな免許は仕事の合間に取得した。集落にわなを10基ほど仕掛け、主に仕事のない週末に見回る。捕獲できるのは月に1~3頭。鹿肉は犬用のジャーキーなどに加工し21年から販売する。イベントで1日100個売れたこともあったという。今後は「衛生面に配慮した加工施設を整え、人の食用基準を満たした鹿肉加工品の開発を目指したい」と意欲的だ。

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