新規就農者

[未来人材プラス]海外の研さん生かし直売主体で地域に密着 小さな楽しみ大切に 岐阜県各務原市・橋本涼さん(36)

 岐阜県各務原市のはしもと農園の代表、橋本涼さん(36)は、愛知県から移住し独自ブランドのミニトマト「あかね」を生産・販売する。オランダで技術や文化を学び、2018年に高軒高連棟ハウスを建てて本格生産を始めた。農場での直売を軸に販売し、固定ファンを獲得するなど地域に定着してきた。

 橋本さんは愛知県小牧市出身。公園や都市緑化を学ぼうと大学は農学部に進学した。授業で養液栽培について触れた時に「土を使わない農業もある。先進的でかっこいい」と感じたという。

 大学院を休学し、オランダの農家で1年間働きながら学んだ。どの農家も確かな知識に裏打ちされた栽培をしていることを実感。何より、多くの人が自分の時間を大切にしながら暮らしていることに本当の豊かさを感じた。「海外と日本の良いところを合わせ、日本の農業や暮らしを本質的に豊かにしたい」と就農意欲が高まった。

 農業資材メーカーや農家の下でさらに経験を積み、14年に各務原市で中古ハウス約10アールを借りて就農。その後、規模拡大し、18年に約40アールの高軒高ハウスを新設した。

 総販売高の6、7割が直売。当初は仲卸を通した相対取引が主だったが、直売を始めたところ好評で、口コミで広がり、今は開店前から行列ができるようになった。

 「味には自信があった」が、それ以上に来店者とのコミュニケーションが集客につながると考える。「味や価格など『モノの相場』に加えて、何か新たな価値を提供することが大切だ」と話す。スタッフには来店者と会話を楽しんでほしいと伝える。農場でイベントを開くこともある。

 経営のモットーは「日常にちょっとした楽しみを」。自身やスタッフ、消費者など関わる人全てに楽しみを提供したい。日々の生活に何か一つでも楽しみがあれば、人生が豊かになると考える。海外で学んだ知恵だ。