新規就農者
皇室への「献上桃の郷(さと)」で知られる福島県桑折町で桃を4ヘクタール栽培する羽根田幸将さん(32)は、Uターン就農し、経営規模を父の代から8倍に拡大した。条件不利地も集積し、農地を整備。複数の農業生産工程管理(GAP)も認証取得し、町の桃の一層の飛躍を目指す。
羽根田さんは祖父の代から続く桃農家の4人兄弟の次男。学生時代、美術科の教員を目指していた。山形大学教育学部に進学し、美術科の教員免許も取得した。物作りが好きだったからだ。卒業後は山形市少年自然の家で3年間勤務した。
しかし、2014年に父の胃がんが発覚。桃の栽培を誰が継ぐか、兄弟で話し合った。3年間、自然に囲まれた環境で仕事をしたこと、何より物作りに携わりたいという思いが就農を決断させた。桃の栽培技術を学ぶため、15年から1年間、県の果樹研究所で研修を受けた。
16年に父から経営を継いだ時、面積は50アールだった。しかし、農業だけで生計を立てたいという思いから農地を集積した。ただ、集まってきたのは当初、水はけが悪いなど条件不利地だった。受け取っていた国の青年就農給付金(当時)のほとんどを農地の改良や改植に使った。羽根田さんは「苦労したが、農地を預けてもらえるだけでもうれしかった」と当時を振り返る。
経営面積は4ヘクタールまで拡大した。また、国際基準のGAPをはじめ、複数のGAP認証を取得。経営面のメリットだけでなく、持続可能な農業という側面からも、GAP認証取得の価値を見いだしている。
羽根田さんの夢は、町を日本で一番有名な桃産地にすること。そのために、東京の就農希望者を受け入れるなど産地維持・拡大に尽力する。「農業は一年間の頑張りが試される。農業を始めてから地元への思いや価値に気付けた」と羽根田さんは語る。
羽根田さんが受講した福島県の「長期就農研修」の紹介ページはこちら