新規就農者
長野県松川町の原田薫子さん(31)は東京都から移住し、町独自の「果樹農業研修制度」1期生として、桃とリンゴの栽培や販売を学んでいる。大好きな桃の栽培を極め、将来は町の果実を使ったスイーツを販売する店の開業を目指す。
農家の作るスイーツ店――。原田さんが研修後に目指す姿だ。今年5月には町内にある築108年の古民家を購入。12月の研修修了までに改修を終え、町あっせんの一戸建て賃貸住宅から生活拠点を移す予定だ。
同町への移住は、南アルプスを望む景観と、充実した研修制度の内容が決め手となった。研修制度は、3年間で果樹農家を育てる。同町の地域おこし協力隊員が対象で、栽培指導や販売実習などを通して独立就農に必要な技術と知識を学ぶ。
同制度では指定の農家や農業法人、県や町、JAみなみ信州などが一体で指導に当たる。指定農家の紹介で、県内外のベテラン農家からも剪定(せんてい)技術を学んだ。「町全体で私たちに真剣に向き合ってくれる。制度のおかげで、いろいろな所で学べたし、何度も助けられた」と話す。
同町に来るまでに、岡山県の農業法人で桃の栽培管理を経験したが、事情によりやむなく帰郷。就農への思いが捨てきれない中で、自治体とJAが主催する「南信州現地訪問見学会」で、この研修制度を知った。
町があっせんする園地を借り受け、桃を38アール、リンゴを22アールで栽培する。リンゴは昨秋に初収穫し、東京都内で2日間販売。前日のリピーターも多く、延べ240人に280キロを売り、手応えを感じた。桃は今夏に初収穫を迎え、主にインターネットで、規格外品は軒先で販売する計画だ。
「規模拡大や法人化は望まない。温かく受け入れてくれた地域に感謝し、果樹100年の歴史があるこの町で、農業人として生きたい」。先を見据えて、日々の作業に励む。
原田さんが研修する松川町果樹農業研修生(地域おこし協力隊)の募集サイトはこちら
https://www.town.matsukawa.lg.jp/soshikikarasagasu/sangyokankoka/nogyoshinkogakari/1/1/4738.html