新規就農者
畜産業が盛んな愛知県半田市。俵良介さん(38)は市内の乳肉複合農場で働く傍ら、妻の絵美子さん(33)と共に交雑牛(F1)のブランド「知多牛(響)」を肥育する。二人三脚で手塩にかけた牛は共進会で最優秀賞を取るなど、高い評価を受ける。地域で離農が増える中、夫妻による畜産経営のロールモデルとなっている。
小さいころから動物が好きだった良介さん。「動物の世話をしていきたい」と農業高校卒業後、北海道の酪農学園大学に進学し、半田市で乳肉複合経営をする「エル・ファーム・サカキバラ」に就職した。就職して数年は仕事に追われた。一度は退職したが、他の仕事をする中で、同社に戻りたいと考えるようになり、半年後に再就職。現在では同社知多農場の農場長を担っている。
転機となったのは同社に戻って10年ほどたったころ。入社面接で良介さんが「自分の牛舎を持ちたい」と話していたことを社長が覚えており、同社近くの空き牛舎を紹介された。経営や借金を抱えることに不安があったが、同僚でもあった絵美子さんが「やってみよう」と強力に後押しした。
「俵牧場」として絵美子さんが経営主となり、2017年にもと牛8頭を導入した。「青年等就農資金」を活用し、牛舎の購入などに充てた。良介さんは平日の仕事終わりや休日に俵牧場で牛の世話をしている。2人で就農せず、良介さんが会社員として働くことで世帯収入を安定させ、「牛で稼いだ利益を牛に還元したい」と2人は話す。
肥育では、毎朝1頭ずつ様子を確認しつつ、「毎日一定の給餌時間になるよう気を付けている」と絵美子さんは話す。21年にはJAあいち知多の枝肉共励会、22年には大阪市の南港市場交雑牛枝肉共励会でそれぞれ最優秀賞を受賞した。今後は空いている牛房に牛を導入しつつ、「一度は日本一になりたい」(良介さん)と一層の高みを目指している。
「俵牧場」の牛舎購入などに活用した「青年等就農資金」を取り扱う日本政策金融公庫の案内ページはこちら。