新規就農者
愛知県日進市で露地野菜など少量多品目を生産する岩井まゆみさん(36)は、調理師と食育ソムリエの資格を生かし、生産から加工、販売、食育活動までマルチにこなす。元プロダンサーで、今はダンス指導者の一面もある。指導する生徒にも野菜の特徴や魅力を伝え、地域の食と農の懸け橋となっている。
日進市で生まれ育った。「幼い頃から祖母の畑が遊び場。苗を見ればどの野菜か分かるような子どもだった」と振り返る。18歳でダンサーとしてプロデビューした後も、農業はずっと好きだった。祖母と競い合うようにいろいろな野菜を作ったという。JAあいち尾東の職員に勧められて出荷も始め、「半農半芸」の日々を送っていた。
だが28歳の時、難病を患い、ダンサーを続けられなくなった。祖母は前年に亡くなり、畑を維持する人がいない。いつも食卓には祖母の畑で取れた野菜があった。「野菜を食べられなくなるのは想像できない」と、自分で守ろうと決めた。
現在は市内2カ所で、父と二人で年間30種類以上の野菜を栽培。産直や量販店、レストラン、給食など多様な販路に出荷する。珍しい品目の栽培や、作型をずらしたりサイズを変えたりして付加価値を高める。なじみの薄い品目には自作のラベルや店内広告(POP)を付け、特徴やお薦めの食べ方を紹介する。
将来を見据え、調理師と食育ソムリエの資格も取った。出荷できない野菜はソースやつくだ煮などに加工し収益を高める。指導しているダンスチームは下は3歳で上は70代。指導の傍ら、さまざまな年代の人に野菜の魅力を伝え、料理の助言もする。二つの資格で活動の幅が広がった。
岩井さんは今も闘病中で、通院が必要だ。妊娠中で出産も控える。それでも「100%でなくても農業はできる。ママ世代だって就農できるということを発信したい」と意欲を燃やす。