新規就農者
スポーツ用品の輸入業から農業に参入した鳥取市の三宅大地さん(33)は、同市鹿野町で400年続く伝統のショウガ作りに挑む。栽培では先進地の高知県の密植を導入し、貯蔵場所にJA鳥取いなばの閉じた支店を借りるなど工夫。地元出身の若者をアルバイトとして雇い、生産減が続く産地に新風を吹き込む。
鳥取市の山間部に生まれ、小さい頃は山や川を駆け回ったが、農業とは無縁だった。東京の大学に進んだ後、中国に留学。在学中に個人で輸入業を始め、卒業後は中国やフィリピン、東京で暮らした。
30歳を迎えると故郷への思いが強くなり、地元の鳥取に帰りたくなった。「地域に何かできることはないか」と考え、着目したのがショウガ栽培だった。同町では、江戸時代に初代鹿野城主の亀井茲矩(これのり)が、朱印船貿易で東南アジアから持ち込んだとされるショウガ栽培が続くが、少子高齢化で生産量が減っていた。
2019年にUターン。クラウドファンディングで資金を集め、55アールの農地を借り、21年から栽培を始めた。初年は10アール当たり300キロを植え付け、4・5トン収穫した。「もっと収量を増やしたい」と、ショウガ生産量日本一の高知県を視察。学んだ密植栽培を取り入れて22年は植え付け量を10アール当たり800キロに増やし、20トンの収穫を目指す。
ショウガはJA直売所に出荷する他、輸入業の経験や人脈を生かし、県内外の飲食店への販路を開拓。シロップやパウダーなど加工品も手がける。今秋には空調完備の倉庫が完成予定。建物はJA鳥取いなばの旧小鷲河支店の建物を借りた。
作業は、専任の一人とアルバイト約10人で協力し合う。全員が20~30代だ。「若者は一度は県外に出た方が良いが、帰れる場所があることが大事。いつでも帰れる拠点をつくりたい」と力を込める。