新規就農者
有機農産物もっと 地域まとめ販路開拓
青果仲卸の営業マンから転身し、地元を有機農業の産地としてもり立てるのが大阪府能勢町の森畠正輝さん(33)だ。商談経験を生かし府内外の小売りなどとの契約を伸ばす。地域の生産者の分もまとめて共同で輸送、販売する仕組みづくりにも挑戦するなど、産地拡大への歩みを進める。
実家は兼業農家。農業で生計が立つ想像ができず、流通の現場を学ぼうと2012年に名古屋市の青果仲卸に就職した。目の当たりにしたのは、一大産地でも価格交渉に苦労する現実。「中山間地の能勢では、なおさら難しいのでは」。決心がつかないままUターンし、商社で働いた。
同町の生産者との出会いが考えを変えた。有機栽培と戸別配達で付加価値を高めていた。ここで学びたいと2年通い、21年に独立。研修先と同じ少量多品目で、野菜90アールと米50アールで経営する。
当初は町内の出荷が中心だったが、営業の仕事が好きで、販路拡大には積極的に動いた。コロナ下での巣ごもり需要も追い風となり、関西のスーパーなどと契約を決めていった。
ただ、有機農産物のニーズではずれを感じた。販売先は多様な品目が少しずつ欲しいが、生産側は品目を絞り大量に出荷した方が作業しやすい。
そこで、単独で要望に応えられないなら地域全体で農産物を集約しようと考えた。同町では有機農業に取り組む移住者が増えており、作型も多様だ。地域の生産者から仕入れる他、足りない品目は自ら作り、販路を開拓。配送も一本化できる。「農家と実需の両方の気持ちが分かる強みを生かしたい」とし、来年から取り組む計画だ。
子供の頃から町の人口は半減し、母校も廃校になった。農産物の仕入れはリスクを負うことになるが、町の現状が突き動かす。「経営の成功モデルがないと能勢で農業をやりたいとはならない。自分もその一人になり地元を盛り上げたい」