新規就農者
乳牛の健康を第一に 分娩事故ゼロめざす
岩手県岩泉町の山屋祐太さん(29)は、第三者継承で念願だった酪農家になった。酪農ヘルパーを経て、2020年に就農。牛に負担をかけない酪農を実践し、安定した経営を目指す。
盛岡市のサラリーマン家庭に生まれた。子どもの頃から、同町で牛を飼っていた祖父母の手伝いをしていたことがきっかけで「牛に関わる仕事がしたい」と、盛岡農業高校で畜産を学んだ。卒業後は葛巻町で2年間の研修を受けた後、岩泉町で酪農ヘルパーと牛群検定員として働いた。
転機は19年、離農を検討する町内のヘルパー先から、農場を継ぐ相談を受けたことだ。最初は経営できるか不安だったが、同農場での研修で自信を深め、20年10月に酪農家として独立した。
経営継承で課題となったのが、譲り受ける生産資産の価値算定だ。乳牛や生産設備などの希望価格が双方で異なっていたことから市場価格を参考にしたり、第三者に見積りを取ったりした。「双方が納得できる金額で折り合うのに時間と労力がかかった」と振り返る。就農には、JA全中のJA畜産継承支援事業を活用した。
飼料価格高騰の中、経営は決して楽ではない。そんな中で「小まめな観察と牛の健康維持を第一にした飼養を心がけている」と山屋さん。無理な搾乳による廃用や事故を避け、可能な限り長期間飼養。小まめな観察を通じ、分娩(ぶんべん)事故はほとんどない。雌牛を早期に確保できることから、高単価を期待できる交雑種(F1)を生産し、経営の安定を図っている。
就農から2年が過ぎ、乳牛は30頭規模から80頭規模に拡大した。繁殖和牛も10頭ほど飼養しており「血統や体つきを考えながら、理想とする牛を目指していくのは楽しい」と、牛群改良にも意欲的だ。同町周辺には、若い酪農家・畜産農家も多い。「仲間と共に、地域を盛り上げていきたい」と展望する。
▼岩手県で第三者継承を考えるときに役立つ「いわてアグリベンチャーネット」の解説ページはこちら。
https://www.pref.iwate.jp/agri/i-agri/announcements/2005375.html