新規就農者
米麦で第三者継承 規模拡大し若手雇用
埼玉県熊谷市の中野拓海さん(31)は、地域の大規模な米麦農家から経営を第三者継承した。農機や倉庫をリースしてもらうことで初期費用を抑え、共に働く中で技術を受け継いだ。高齢化した周辺の農家から農地を引き受けて規模を拡大。若手も雇用し、担い手として活躍する。
知人を通して出会い、3年ほど従業員として働いた掛川久敬さん(77)から、2019年1月に経営継承した。主食用米と飼料用米を合計約28ヘクタール、六条大麦33ヘクタールを栽培する。農家を目指していたわけではなかったが、後継者を探していた掛川さんから継承の提案があり、引き受けた。
中野さんは、第三者継承のメリットを経営や作業のめどが付くことと考える。先代のやり方を大きく変えずに引き継ぐことで収入や経費、作業時期などが見通せる。「その方法で実際に何十年も経営を続けてきている。あまり我を出し過ぎないことが大事」と話す。
継承に当たり、掛川さんから農機や倉庫を年払いでリースしてもらうことで初期費用を抑えた。二人で農地所有者を回り、利用権を設定して農地も引き継いだ。県大里農林振興センターや、JAくまがやの地域農業の担い手に出向くJA担当者(愛称TAC=タック)も協力。地域の農家との顔合わせや手続きに奔走した。
新規就農を希望する人には、初期投資の資金を確保する重要性をアドバイスする。中野さんは自分の貯金と日本政策金融公庫の青年等就農資金で賄った。「肥料も農薬も買えない状態で農業をしても収入は増えない。どんどん悪循環になってしまう」という。
継承後、地域の農地を引き受けることで経営面積は10ヘクタールほど増加。30代の若手2人も周年雇用する。中野さんは「主食用米価格の下落や飼料用米への支援の削減、燃料・肥料の高騰など課題は多いが、無理なくやり続けていきたい」と話す。
▼中野さんが経営継承をする際に協力した埼玉県大里農林振興センターのウェブサイトはこちら