新規就農者

新規就農者

信金から酪農へ転身 就農に役立つ情報発信も構想 北海道豊富町・平野優さん

 宗谷管内豊富町に新規就農した平野優さん(37)は、長年の金融機関勤めの知識を生かし、酪農経営に励む。動物相手の毎日は大変だが、地域住民とつながり、学びを深め、飼養管理や環境整備に力を入れる。将来は新規就農者向けの情報発信もしたいと夢を描く。

 昨年秋の就農時から牛を計画的に導入し、現在は約50頭を飼育する。1日に5頭生まれる日もあり、出産分娩(ぶんべん)に立ち会う日々だ。睡眠不足との闘いだという。作業環境を整えるため、ミルカーのポンプなどを設置する小屋や事務所スペース、子牛のハッチを自作するなど、できる限り手作りしてきた。

 大工経験はなかった。そのため、牛舎の工事を手がけるプロの大工に相談する。平野さんは「人に助けられてきた」と振り返る。特に、妻の新菜さん(29)の実家が同町の酪農家であるため「様子を見に来てくれる親族がいるのは、ありがたい」と感謝した。

 稚内信用金庫に勤務していた平野さん。酪農に興味を持ち、新菜さんの実家の作業を手伝っていた。酪農家への融資の機会が多い道東の信金勤務時に組合員勘定制度(クミカン)の決算書の見方を勉強した。自分の裁量で経営できる酪農の面白さを知ったという。

 その後、酪農に必要な車両の免許を取得、信金時代の縁を頼りに、豊富町に就農を相談。研修、実習や継承先の紹介を受け、昨年、新規就農した。家族と過ごす時間を多く取れることも、就農を決断する大きなきっかけとなった。

 「新規就農したいと思っても、何をどうしていいか分からなかった」と平野さん。融資制度や就農の相談場所なども手探りだった。就農後も、作業環境をどうつくったらいいか、餌の量はどのくらいか、衛生管理、牛の体調管理に何が必要かなど、多くの疑問があった。相談できる人を増やしながら解決してきたという。

 新規就農者ならではの悩みを踏まえ、学生時代からホームページやブログ、動画配信をしていた経験を生かし、将来は新規就農者向けの情報発信をしたい考えだ。「興味を持つ人が増えないと産業はなくなる。多くの人に、1次産業に興味を持ってほしい」と話す。

 

▼平野さんが就農した北海道豊富町の酪農関係の就農支援情報をまとめたウェブサイトはこちら

https://agri.mynavi.jp/2022_08_31_201600/