新規就農者
ころんとイチゴ “我が子”に夢中
三角すいの形がきれいに整い、しっかり実も詰まり果肉はみずみずしい――。イチゴの収穫が始まった昨年12月、「やっとここまで育った」とうれしさが込み上げた。「ころんとした姿がなんともかわいく思えて」
滋賀県甲賀市の就農2年目のイチゴ農家、春日かおりさん(32)は、笑顔で1年目を振り返る。別の仕事に就いている夫と共に2歳半と11カ月の子どもを育てながら、自身は6アールのイチゴ栽培を切り盛りする経営者だ。
多忙を極める収穫期は「もうめちゃくちゃ」。朝から収穫などの作業を始め、地元のJAこうかへの出荷などもこなす。目まぐるしく一日が過ぎる中、子どもたちの食事の用意などもやり切る。
経営者と2児の母。「どちらも大変。それでも好きなことをして生きていきたい。だから頑張れる」
イチゴ栽培に情熱を注ぐ契機になったのは滋賀県立農業大学校での農家研修だった。苗から伸びるランナーから多くの新たな苗が生まれ、それがさらに実をつけていくさまを目の当たりにして「自分の手で作物を育てていると、強く実感できた」と振り返る。他の品目も学んだが、イチゴはとりわけ強く心に響いた。
県内の農業法人に就職し、志願してイチゴ栽培にも携わったが、子育てと両立が難しいと判断し、退職した。栽培するからには「一から十まで責任を持ちたい」という気持ちが強かったからだ。
次の仕事を模索する中でもイチゴへの愛着が消えることはなかった。「働くなら好きなことをやりたい」と自営でのイチゴ栽培を決意。自己資金や各種支援制度を活用し、栽培施設を確保した。
2カ月後には実がつき始め、2年目の収穫が始まる。「今年はもっと理想に近づきたい」。今は芽かきなどの手入れに余念がない。
▼春日さんが研修した「滋賀県立農業大学校」のウェブサイトはこちら