新規就農者
兵庫県明石市から新潟県糸魚川市に移住した石田泰雅さん(35)は、高齢化が進む地域農業を守ろうと奮闘する。水稲や「越の丸茄子(なす)」、キュウリ採種、作業受託を手掛ける。冬は酒造会社に勤務するなど年間収入を確保。地域の若手農家でつくる組織「Teamフォサマグ」の会長も務め、農家の交流を後押ししている。
農家出身ではない石田さんは、地元の農業高校で畜産を学んだ。希望する就職先が見つからず専門学校へ進んだが、勉強内容に興味が持てなくなり休学。漠然と「雪がある所に行きたい」と、明石を飛び出した。たどり着いた先は糸魚川市で、登山客を相手にする山小屋だった。
宿泊客の接客や除雪作業など山小屋に住み込みで働きながら2006年から10年まで過ごした。結婚を機に山小屋をやめ、妻・久美さん(43)の実家がある大野地区に移り住んだ。久美さんの同級生だった大規模農家の下で就職。農機の扱いなど稲作の技術と知識を深めた。
移住先に溶け込むために運動会や飲み会、竹林の伐採など、地域の行事などに積極的に参加し、地元の方言を使う。次第に地域の信頼を得ていく中で、高齢化と担い手不足という実情を知る。高齢の生産者から「農地を任せたい」と打診を受けるようになったこともあり、16年に独立を決意。当初15アールだった経営面積は、8ヘクタールまで増えた。国の青年就農給付金事業(現・農業次世代人材投資事業)を活用し、ローンを組み農機などを買いそろえていった。
20年からは農業青年9人でつくる「Teamフォサマグ」の会長を務める。情報交換だけでなく、祭りに出店したり、農業体験を主催したりと、地域との関わりを大切にする。新型コロナウイルス禍で活動の機会が減っているが「事態が収束したら、もみ殻の堆肥化などの研修会を開きたい」と意欲を見せる。
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