新規就農者
栃木県那須塩原市の農家・君島陽一さん(40)は、農家らでグループ「青空プロジェクトTHE DAY」を発足させた。山道にマウンテンバイク(MTB)を走らせる活動などで獣害対策と観光との両立を目指す。
23歳から続ける郵便配達が活動の原点だ。車を走らせ、地域の衰退を目の当たりにしてきた。高齢による離農に加え、獣害で営農を諦め、畑が放棄地となっていくことに焦りを感じた。配達で農家から相談を受けるたび、先祖が開拓してきた農地再生への思いを強めた。
2015年の農林業センサスによると、市内の耕作放棄地は336ヘクタールと増加傾向。20年度鳥獣被害額は、約5900万円で県内の約2割に及ぶ。
君島さんは地元猟師に教えを請い、農家に残さを畑に放置しないよう促すなどした。昨年、県などが開く鳥獣管理士の養成講座で専門知識を習得。獣害対策と地域振興を無理なく両立させたいという持論に至った。「地元を離れた農家の息子・娘が帰りたくなる仕掛けを生み出せば、地域に縁のない人を招くことにもなる」と語る。
「草刈りの後、自転車で帰れば楽しいのでは」。山道にMTBを走らせるアイデアは、農作業中に思い付いた。一人の力では限界を感じ、立ち上げたグループのメンバーと道を整備し、住民から譲り受けた約10台を修理して貸し出す。「自転車が山で走ってから獣害がない」と喜ぶ声が寄せられる。温泉客や懐かしいMTBのモデルに乗れると知った愛好家も訪れる。
グループの活動はこの他、遊休農地で栽培したソバの6次産業化や郷土の豊作祈願の祭りなど幅広い。郵便配達で住民の意向を熟知した君島さんのアイデアに、関心を持ちそうな人に声を掛けて実現させてきた。「現役世代が農業を続けたいと思える環境を整え、開拓してきた先人に喜ばれるような活動をしていきたい」と展望する。
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