新規就農者
山形県東根市でブドウやサクランボを1・7ヘクタールで栽培する松浦有舞さん(27)は、一度離農した経験から新規就農でも稼げる農業を追求する。フリマアプリで販路を開拓し、根域制限栽培の実践で、収益化までの時間短縮を実現させている。
「新規参入者の最大のハードルは収入面だ」と語る松浦さん。農業参入は2度目だ。高校卒業後に就農したが、思い描く姿とは懸け離れていた。「手取りがわずか。これが現実かと希望がしぼんでいった」と振り返る。
生活していくため地元のJAに就職したが、母が病気で入院した。闘病しながら食べていたのがブドウだった。「そんなに好きなら、俺が作ってける」と19年、再起を誓った。20年に本格始動し、祖父の土地に加え、農地10アールを借りた。
「市場出荷は課題が見えにくいが、フリマアプリだと消費者の本音を聞けて改善しやすい」。松浦さんはJA出荷の他、四つのアプリを駆使し販路を開拓した。規格外品でも価格を設定でき、24時間注文を受けられる。
サクランボは単身世帯用に量を減らして価格を下げた。オーダーメードできりの箱を作り、見栄えのする贈答用も用意。当日発送を心掛け、商品紹介文は品種の特徴や保存方法を詳細に書いた。サクランボは市場価格の2倍で売れた。
「小面積でも利益を出さないといけない」と21年から、地域でも珍しいブドウの根域制限栽培に取り組む。10アールでブドウ「シャインマスカット」「雄宝」など、220本を70リットルの根域制限栽培ポットに植えた。根が吸い上げる水分を制御して糖度を高め、定植から収穫までの期間を早められる。来年の収入は、根域制限栽培だけで100万円を超える見通しだ。再挑戦2年目となる21年の収入は、会社員2年目の全国平均年収の2倍を超えた。「安定収入を実現させて、他の新規就農者の支援もできるようになりたい」と思い描く。