新規就農者
千葉市でラッカセイを生産する「あんばい農園」の代表、梅津裕一さん(33)は、自身で「畑の青空教室」と名付けた新たなスタイルに挑戦している。元教員の経歴を生かし、秋の収穫時期に講義と作物でラッカセイを学ぶ機会を設けた。
2012年から5年間、神奈川県の中高一貫校に理科教員として勤めたが、体調を崩し退職。療養で妻の実家に近い千葉県大網白里市に移住し、リハビリで始めた家庭菜園に熱中。さまざまなことを自分で決める農業に魅力を感じ、就農が目標になった。
県内農家などで研修し、技術を習得。探し当てた千葉市内の農地1ヘクタールを借り、教員だった経験を生かして体験学習もできるラッカセイ農園を目指した。「どのように実がつくかなど、生態を知らない人も多い。教えがいがある特産で勝負しよう」と考えた。
農機やハウスの費用は日本政策金融公庫の融資で賄い、19年4月に開園。研修で意気投合した三本木絵未さん(35)と二人で運営する。品種は「おおまさり」と「Qなっつ」。農薬と化学肥料は使わず、緑肥で土づくりにこだわる。年間約2・5トンを生産し、委託生産したオイルやペーストなども販売する。
収穫期の8~10月、農園は梅津さんの“教室”になる。親子連れらに、作物も使ってラッカセイの生態や生育過程を教え、収穫や選別の体験、試食を通して五感でラッカセイを伝える。これまでに約60人が参加。コロナ禍の21年にはオンライン授業を実施。参加者に送った土付きの実を一緒に観察した。
21年からは養蜂にも取り組み、採蜜などの体験教室も催した。新たな加工品「ピーナッツハニーペースト」も誕生。また、今夏までに生産規模の拡大も予定している。
梅津さんは「いつか社会復帰を目指す人を農園で受け入れたい」と、自身を救った農業での社会貢献を思い描く。
梅津さんが研修したアグリイノベーション大学校のサイトはこちら